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札幌地方裁判所 昭和63年(わ)400号 判決 1988年9月14日

本店所在地

北海道静内郡静内町末広町三丁目四番二二号

法人名称

有限会社 田湯産業

代表者住所

同町末広町三丁目四番二一号

代表者氏名

田湯喜義

本籍

同町末広町二丁目三四番地

住居

同町末広町三丁目四番二一号

会社役員

田湯喜義

昭和二四年一月二三日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官西浦久子及び弁護人(私選)本田勇各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社田湯産業を罰金一八〇〇万円に、被告人田湯喜義を懲役一〇月に各処する。

被告人田湯喜義に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社田湯産業(以下「被告会社」という)は、肩書地に本店を置き、土木一式工事請負施工業、一般区域貨物自動車運送事業等を目的とする資本金一〇〇〇万円の有限会社であり、被告人田湯喜義は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人田湯喜義は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上げの一部を除外し、架空経費を計上するなどして架空名義の簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三四二六万八六二一円であり、これに対する法人税額が一三〇九万八一〇〇円であったにもかかわらず、昭和五九年五月三一日、浦河郡浦河町常磐町二八番地所在の所轄浦河税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五〇一万五一九四円で、これに対する法人税額が一一七万円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同日を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額一一九二万八一〇〇円を免れ

第二  昭和五九年四月一日から昭和六〇年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七五二二万八一二二円であり、これに対する法人税額が三一〇二万七六〇〇円であったにもかかわらず、昭和六〇年五月二九日、前記浦河税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一〇八五万九二五五円で、これに対する法人税額が三二〇万六三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同月三一日を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額二七八二万一三〇〇円を免れ

第三  昭和六〇年四月一日から昭和六一年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七一九三万五九四一円であり、これに対する法人税額が二九六二万四〇〇円であったにもかかわらず、昭和六一年五月三一日、前記浦河税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三五七万四三〇一円で、これに対する法人税額が四三五万一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同日を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額二五二七万三〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書(二通)

一  田湯すみ子の検察官に対する供述調書(二通)

一  大蔵事務官作成の完成工事高調査書、当期製品製造原価調査書、租税公課調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、支払利息割引料調査書、貸倒損失調査書、減価償却費の償却超過額及び認容額調査書、寄付金の損金不算入調査書、事業税認定損調査書、現金・預金調査書、貸付金調査書、脱税額計算書、調査事績報告書(昭和六三年七月一九日付三通)

一  商業登記簿謄本

一  押収してある法人税決議書綴一綴(昭和六三年押第一〇四号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の調査事績報告書(昭和六三年五月一九日付)

(法令の適用)

被告人田湯喜義の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、同被告人を懲役一〇月に処し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。そして、被告人田湯喜義の判示各所為はいずれも被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社に対しては法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑が科せられるべきところ、いずれも情状により同条二項を適用し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪の罰金の合算額の範囲内で、被告会社を罰金一八〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人田湯喜義が、被告会社に関し、三事業年度にわたり、合計一億五一九八万円余の所得を秘匿し、合計六五〇一万円余の法人税を免れた事案であって、ほ脱税額が高額であること、ほ脱率も約八八パーセントの高率にのぼっていること、所得隠蔽の手口も巧妙悪質であることなどを考えると、本件はこの種税法違反として相当重大かつ悪質な事案であると言わなければならない。

しかしながら他方、本件においては、すでに被告会社において修正申告をなし、修正本税、重加算税、延滞税等の全額が納付済であり、結果的には相当多額の経済的制裁を受けていること、本件の起訴や新聞報道等により、被告会社は知事から道の土木工事に関し指名業者に指定される予定が取り消され、被告人個人も相応の社会的制裁を受けていること、被告人には前科・前歴が全くないこと、自己の非を認め深く反省の情を示していることなどの汲むべき事情が認められ、その他被告人の年齢・経歴・家族関係などの諸事情をも併せ考慮すると、主文のとおり量定するのが相当であると思料する次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社に対し罰金二〇〇〇万円、被告人に対し懲役一年)

(裁判長裁判官 大山隆司 裁判官 荒川英明 裁判官 栗原壮太)

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